怒るな働け 
トップ | 次頁(目次) 

怒 る な 働 け   嘉 悦 孝 子 著

 女子に學問が無くても世が渡れた時代は別問題ですが、現代のやうに諸方面の育が發達して參りますと、單り女子ばかりが無學で通す譯には、固より時勢が許しませぬ、それかと申して餘り新進の學問にばかりカブレて、修養のたりない、内面の充實しない女子が澤山出來るのも、國家の慶事ではありません、何れにしても女子育が盛んになればなる程、世間から其の育に對する注文が多くなり、一般の女子自身も自分が踏み行く道に不安の念を抱く傾きがあるやうです、元來私は日本の女子が其の本分を盡す上に於て、何處までも堅實なる智識を基礎として、最も能き働く實用向きなので、而かも質實にして穩健でなければならぬと信じて居ります、また現在の國家社會の状態から見ましても、斯る女子を要望してい居とおもひます、そこで私はこんな見地から、折に觸れ暇に任せて、これまで皆樣にお話しゝた感想の談片や、又私の信じた處世法の一端を、纒め上げたのが此の「怒るな働けの」一書となつたのであります、今私の一家言を臆面もなく、さらけ出すのは、驚くべき大膽には違ひありませんが、幸にも世の多くの女性方が、多少の參考にでもして戴ければ、私の本懷は之に過ぎないのであります

大正三年十二月花の日   著者しるす

トップ | 次頁(目次)